1.
「隠れたテーマ」なんて言うと物々しいタイトルですが、それは『全身を均一に遣う』という事です。
武術研究家の甲野善紀先生は「うねらない、ねじらない、ためない」身体の遣い方を掲げていらっしゃいますが、それを仙心会流に解釈したものが「全身を均一に遣う」という事です。
2.
ものすご〜くざっくり言うと、私たちが一般的な「運動」をしようとするとき、例えばランニングをするときは脚に意識が集まり、テニスをするときは腕に意識が集まります。
ですが仙心会の合気武術では、身体の一部分に力や意識が集中することを嫌います。
それは、例えば何か物を動かそうとするとき、腕だけで押したり持ち上げたりするよりも身体全体で動かす方が負担が少ないからです。
もちろん、あらゆるスポーツの上級者においては常識なのかもしれませんが、仙心会の合気武術においては最初から積極的に稽古しています。
また、手に持った木刀などで物を打つとき、手首のスナップで打ったりすると反動で手首を痛めますが、身体全体を遣うことで反動を全身に分散することができます。
さらに合気武術としての効用も大きく、肩や肘を固めて腕で押そうとすると、その気配は相手に容易に察知されて抵抗に遭ってしまいますが、身体全体を遣うことで力の出どころは見えにくくなり、相手は抵抗しにくくなります。
また、力が全身に分散していますので、力の固着(居付き)を減らすことができ、相手に力をかけながら体の変化(体捌き等)を起こすことも楽になります。
3.
これを稽古するには、普段の生活の中で動きや姿勢に無理がないか、無駄がないかを見つめ直すことが大事です。
例えば、足音が大きいとか、ドアの開閉音が大きいとか、服や物が壊れやすいといったことは不必要な力が発生している証拠です。
あるいは何か作業をしていて腰が痛くなったり肩が痛くなったりというのも、無理な姿勢や動きがあるために起こるものです。
ある種仕方無い場面もあるのかもしれませんが、極力負担を減らすように工夫することが大事です。
4.
これがなぜ隠れたテーマなのかというと、メインテーマに取り上げて稽古することはありませんが、ほぼ全ての動きがこの原則を前提として成り立っているためです。
相手の重心を崩す「抜き」も、左右の半身を入れ替える「体捌き」も、この全身一致の体が出来ていなければかなり難しいものになるでしょう。
毎回の鍛錬で「片足跳び」を行なっていますが、これは単に足首を鍛えるだけでなく、爪先と床との反発による反動を、足首、膝、股関節、腹筋、背筋、肩、肘、手首、指先、首、顎へと分散・制御する訓練になっています。
片足でジャンプするだけですが、これにより体幹や指先の力も鍛えているのです。
5.
裏テーマというだけあって、思った以上のボリュームになってしまいました。
また次回も続きます。
次回はもっと精神的な部分についてもお伝えしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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